熊本の農業

果汁たっぷりの柑橘 デコポンはなぜこんなに甘いのか
下田 俊行さん / JAあしきた管内

2023.01.17

デコポンの収穫を目前に控えた12月初旬、JAあしきた管内、

海沿いの景観が特徴的な女島地区をたずねました。

デコポンとは?

 デコポンは糖度13%以上、クエン酸1%以下の厳選された不知火(しらぬい:品種名)にのみ与えられるブランド名です。JA熊本果実連によって商標登録されています。デコポン全体の0.3パーセント程度しか出荷されない糖度14度以上の「プレミアムデコポン」もあります。

 

デコポンの1年について

 「収穫時期になるともう少し表面に紅がのるんですよ。今よりもう少し濃い色になります」。下田さんの圃場では露地ものの収穫は12月15日から1月いっぱいまで行います。
 ハウスは色づきの早い果実から部分的に収穫を繰り返しますが、露地の場合は樹1本丸ごとを1回で全部収穫します。

 収穫後の2月から3月には樹の剪定、5月には花が咲き6月には摘果、不要な果実を見極めて取り除きます。夏場は実を大きくする期間ですが、近年の夏は特に暑いので果実の高温障害対策をします。

海に向かってひらけた段々畑。温暖な気候と、太陽の光が下から反射するため、平地に比べると生育も良くなります。
豪雨災害の時に数十メートルにわたって圃場の一部が崩れました。救いはその年のデコポンの質が良かったと。崖上ぎりぎりに残った木は今年も実をつけています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甘さを引き出す「寝かせる」工程

 デコポンの特徴は収穫後の寝かせる期間にあります。とれたては水分が多すぎるため、各生産者さんごとに収穫したものをコンテナで1か月ほど貯蔵します。その間にどの生産者さんのデコポンから出荷するか、50個検査と呼ばれる糖度・酸度チェックで出荷の順番を決めていきます。実そのものが呼吸しているので水分が減ることで糖度もグッと凝縮されます。乾燥や気温に合わせ袋に入れるなどの調整も大切です。

 

 

 

 

 

 

どれくらい「デコポン」を出せるかが勝負

 よい年は育てた不知火の9割以上がデコポンになりますが、中には5割くらいの年もあるといいます。「近年は、昔の甘夏のように外見が綺麗なものをつくれば売れる時代から、味の追求や消費者に喜ばれるものは何かという意識に変わったんですよ。作るならおいしいものを届けたい、そのために農家ができることは何か、デコポンというブランドができたことによって、地域の考え方が一変しましたよね。求められる以上においしいデコポンづくりを目指しています。」

 

 

 

 

 

 

出荷されたデコポンは田浦にある選果場へ運ばれ、ひと玉ずつ、糖度と酸度を測る光センサーのライン
に機械で運ばれます。デコポンが1秒で3、4個が目の前を通過する速さです。
その後、大きさ別に選別、箱詰めされトラックで各地に出荷されていきます。

 

見栄えのいいデコポンとは

 贈答用だけでなく、今は認知度も上がって一般にも多く消費されるようなりました。形は横に広がったものが良いものとされます。全体的にそびえ立つ感じよりは、平べったいボリューム感のあるものがおすすめです。下田さんに農家さんならではのおいしい食べ方を聞くと、「生で食べるのが一番ですが、娘が好きなデコポンジュースは朝よく作りますよ。ジュースにするとまろやかさが増すんです。」

 

 

 

 

 

 

手で剥いてもOKですが、いくつか試した取材班のおすすめは、
デコポンを輪切りにしたあと円形に残った皮を外して食べる方法。
これはデコポンの甘さをより感じられますよ。