熊本の農業

秋の山たからもの 知られざる栗農園へ
鹿子木 雄二さん / 山鹿市 菊鹿町

2021.10.31

日本有数の栗の産地、山鹿。
例年より少し早く収穫が始まったとの知らせを受けて、
菊鹿町の栗農家さんを訪ねました。

 

ひいお爺さんが山を開墾した時に栗を始めたんですよ

 西日本一ともいわれる栗の生産量で知られる山鹿、菊鹿は栗農家さんが特に多い。「一家に一台栗むきの専用機械があるくらい地域に馴染みもありますし。70、80代のベテランの方がほとんどで、若い世代は私とあと1名ほどです。」栗だけでも13か所の圃場を管理しているそうで、1年のおおまかなサイクルでいうと12月から1月の冬は剪定、7月から8月から草刈り。8月後半から収穫と出荷が始まる。手掛ける品種は、丹沢、杉光、筑波、利平、など多岐にわたります。

 

 

 

 

 

 

2.5~3.5mの低樹高栽培の方が良い実がなるそうで、「幹根に近い方が栄養がいくので、枝を減らすことによって実がなる量を減らし、ひとつひとつの実を太くしていきます。余分な枝を抜いていくイメージですね。」

山の恵みを余すことなく活用する

 「出荷が始まると毎日、まずは自家選果して選果場へ出しています。ロスが出ないように元々見た目の悪いものは自宅で加工用に回します。カンナのような機械で鬼皮と渋皮をむき、細かい部分は手作業で行います。それらは主に給食センターや、道の駅の団子の原料として注文を受けていますね。なのでうちはほぼ捨てる栗がないんです。ちゃんと収穫した分だけ収益になりますからね。山の恵みというか、山にたからものがある感覚ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

JA鹿本に出荷された栗の一部は、JA鹿本菊鹿加工場「ルーラル」へ運ばれ、栗のぺーストへ加工される。これらは県内のシャトレーゼでケーキの原料となります。その他の栗は約8割が加工用として主に中部・九州方面の市場へ出荷されています。

「栗は落下して初めて収穫できます。雨などで先に落ちたものは色づきがないと商品価値は無いし、熟れてから落ちないと、やっぱり栗の味は少ないですね。」根元から体当たりするイノシシや幹を食べるシカにも注意が必要だという。それらを乗り越えた美味しい栗が出荷されていきます。

農家さんならではの食べ方はありますか?

 トラック2.3台分の大量のイガが毎日出るので、そのイガを大量に燃やしてその炎の中に缶に入れた生栗を投入して焼き栗をします。良く燃えるのでかなりダイナミックです。あとはシンプルに実を塩ゆでしてスプーンで食べたり、切れ目を入れてトースターで焼くのも香りがいいですよね。

 

 

 

 

 

 

完全に皮を剥いた実を冷凍すると1年は持ちます。

 「常温保存が難しいので冷蔵庫で保管する人も多いですが、保存が必要な場合は完全に皮を剥いた実を冷凍してみてください。長く水につけると変色するので、なるべく早く上げて皮をむいて冷凍庫に入れるのがポイントです。1年はもちます。」ちょうど食べ頃の純国産の生栗は11月くらいまでがシーズン、食べきれない栗は前もって冷凍しておくと安心ですね。

今回キッチンで栗むき用のナイフや剥き機をいくつか試しましたが、栗むき専用の刃のななめに付いたはさみが断然むきやすく、少ない力で作業も簡単に。これなら大量の栗むきも身構えなくて済みそうです。
栗の食べる部分は種子にあたり、鬼皮の部分が実、果肉にあたります。苗を作る場合は、年末までに土に植えて、年明けに芽が出るそうですよ。