今回は熊本の特産品のひとつ、カラーの産地を求めて
熊本市の御幸笛田にあるカラー農家さんを訪ねました。
水耕栽培で育つカラーという花
熊本は全国で2番目の出荷量を誇るカラーの生産地。訪れた圃場で水の中に咲くカラー。「カラーは水の中に球根があり、栽培するには大量の水が必要なので、水耕栽培の環境的にもここは適しているんです。」この辺りは江津湖の下流、加勢川のそばで土地が低く、昔から伝わる字(あざ)名は「船底」というそう。熊本の豊富な地下水が自噴しているところもあって、花農家さんがたくさんポンプをつくって吸い上げていたといわれます。

花は1分咲き~3分咲きで収穫し、出荷後に花の使われる場面で最大に開くようになるという。
水の豊かなこの地域との相性が良かった
今回取材したカラーは「ホワイトトーチ」という品種で、県の品種改良によって作られた経緯があります。「54歳くらいの時にJAに勤めながらカラー栽培を始めました。昼の仕事が終わって、夜にヘッドライトをつけて作業するなど、時間的な作業配分が一番大変でしたね。逆に言うと、勤めながら育てられる花はこれしかなかったんです。ほかの施設園芸の花はもっと小まめなケアが必要。その分カラーは水の温度管理が重要なので、水の管理をしっかりすれば2〜3日期間があいてもどうにかケアできたんです。」地下水は通年17度あるので加温が不要で、夏はそのまま、冬は水そのものの力でハウス内も温かくなる。地下水に支えられた花の出荷は11月から始まり5月の連休まで続きます。

いい花が成長してくるとやっぱり嬉しいんです
「最初にこの辺りに植えられた品種は別のものでしたが、カラーがこの土地との相性が良く、バブル期に需要も一気に伸びて、冠婚葬祭でも求められるようになりました。大規模な水耕栽培だから、どの土地でも簡単に始められるものではないので、他に競合地域も増えにくかったのが一大産地になった理由のひとつでしょうね。」
当時はここのカラー部会は18軒ほどあって、花の生産量は、地域のお米の取引額と同じくらい大規模だったそう。今では地域で3軒のみというが、愛情込めて大切に育てられる花はとても眩しく輝いています。
同じ時間を過ごせば過ごすほど似てくる家族のように、花にも生産者さんらしさが表れるのだそう。素敵な笑顔の園田さんの元で、カラーが凛と生きているのが伝わります。
きれいな花を作る秘訣は…
収穫時の長さは40〜90センチ。収穫後は作業小屋で花の状態を見て、長さごとに仕分け、出荷に備えていく。バブル期は1メートル超が人気だったそうだ。きれいな花を作るための秘訣を聞くと、一つ目は、やはり水。ポンプで吸い上げる地下水が止まったら大変なので、徹底した管理。二つ目はなんと、圃場から水を流し出してしまうザリガニの穴を見つける事らしい。土ののり面から大事な水をダムの決壊のように穴から抜けさせてしまうそうだ。
ひとつの株から何十本も花ができるので、暖かくなると収穫も勝負どきになる。
きれいな花のためには肥料の配合も重要で、微生物やにがり、米ぬかや油かす、魚粉などを発酵させて、
年2回水を抜くタイミングで土づくりをしているそう。