熊本の農業

はっきり言って農業より儲かる仕事はない。
宮崎勲さん / 八代郡氷川町

2018.03.08

宮崎勲さん / 八代郡氷川町

 熊本県のほぼ中央に位置し、2級河川「氷川」が流れ、南北に走る国道3号を境に、東部に山林、丘陵地帯、西部には平坦地帯が広がる氷川町。県内有数のイチゴ産地として知られるこの地でイチゴ農家を営むのは宮崎勲さん44歳。両親と奥様、息子の5人家族。57アールのハウスで熊本のオリジナル品種「ひのしずく」を栽培しており、現在は両親と宮崎さん夫婦の4人、それにパート3人と、長野県からの研修生の8人体制で作業を行っている。宮崎さんは八代農業高校を卒業後に就農。「流れ的に無条件に継ぐものと思っていた。他の仕事の選択肢はなかった」を経緯を語る。若かったこともあり、継いですぐの頃は家を飛び出したくてたまらなかったという宮崎さんだが、自分で生産の流れが分かり始めてからは、本格的に「おもしろいな」と、のめり込むようになったという。

宮崎勲さん / 八代郡氷川町
ひのしずく
「みずみずしい果実、熊本の清らかな水」のイメージから名付けられた熊本生まれのブランドイチゴ。大粒で鮮やかな色合い、そして酸味の少ないとびきりの甘さ。11月下旬から翌年5月まで、関東、関西を中心に出荷される。

自分の中の方程式が出来てきた

 以前、大きな失敗をしたことがあるという宮崎さん。しかしその経験こそが、今の成功を生み出したという。「8年ほど前に大失敗したとき“小手先だけではどうにもならん”と感じた。やっぱり根本的な部分、つまり“土づくり”が大事だと。そこからやり方や考え方が一気に変わった」。それからというもの土づくりの研究が始まる。「あの経験がなかったら勉強もしなかった。失敗したおかげで自分にはまだ基本が足りていないと気づくことができた」と振り返る。土づくりにはどうしても手間暇がかかり、普通のイチゴ農家は9月に畝作りをするのだが、宮崎さんの場合は6月から始めるという。しかしその分、「これだけ準備して、土づくりの段階で“この土の状況なら来年は大丈夫”という確信が持てる。むしろ“あの土の状況で悪くなるはずがない”」。やり始めた頃は毎日ヒヤヒヤだったようだが、「もう8年。自分の中の方程式が出来てきた。今のやり方はコケません」と今では自信を覗かせる。

宮崎勲さん / 八代郡氷川町
宮崎勲さん / 八代郡氷川町
宮崎勲さん / 八代郡氷川町

パック詰め作業をする奥様。イチゴをパックする自動フィルム包装機を導入するなどオートメーション化が図られている。

農業って本当に良いと思う

 宮崎さんは農業の魅力について、「農業はうまくやれば儲かる。息子によく言うのは“はっきり言って農業より儲かる仕事はないぞ”と。そりゃ良いことがないなら、大切な息子に農業をしろとは言わない。自分が本当に良いと思うから、農家をした方がいいと伝えているし、実際にそう思う」と自信を持って語る。同時に、「自分と妻で共有できている方程式を、これからは如何に息子や次の世代に継承していくかが大きな課題。経験値がすべて。やっぱり失敗しないとわからない部分が大きい。この先、息子が就農した際は、多くの経験をして、自分なりの活路を見出してほしい」と期待を込める。

農業は起業家と同じ 想像力を働かせないと

 最後にビジョンを聞いてみた。「数年後には事業拡大したいと計画中。息子が継ぐ頃までには基盤を整えておきたい。農家は作ることだけではなく、売ることも考えておかないとこれからの農業は成り立たない。だから、バイヤーさんにもどんどん来てほしいし、なんでもアイデアを聞かせてほしい。実際、今まで半値だったものが、1.5倍になった例もある。失敗した経験があるからこそ、そういうふうに頭がシフトした。同時に、これからは人づくりが大切になってくる。高齢世代のリタイアは間近。今のうちに人を入れて人材を作るという先行投資が大事になっていく。今の農家は企業家と同じ。とにかく想像力を働かせながらやっていくことが大事だと思うし、そうやっていけば農業の未来は明るいと思う」。

宮崎勲さん / 八代郡氷川町