熊本の農業

農業って、やればやるしこ結果が出る。だから、やりがい溢れる仕事。
渡辺豊さん/天草市深海町

2018.02.19

大無田光幸さん/球磨郡球磨村

大無田光幸さん/球磨郡球磨村
品種:温州みかん
糖度と酸味のバランスがよく、口あたりがまろやかなみかん。風邪やガン・動脈硬化の予防にもよいと評判。天草では9月下旬〜1月までと長期に出荷されている。

 太陽の光と心地よい潮風が降り注ぐ、天草市深海町浅海地区の丘陵地帯。この地で農業を営むのは渡辺豊さん39歳。両親と奥様、3人の子どもの7人家族。手掛ける作物は「温州みかん」、「河内晩柑」、そして「デコポン」。父親と共にこれらを栽培する傍ら、JAあまくさ青壮年部副部長を兼任するなど、若手農家を牽引。「ありきたりかもしれないけど、『美味しかった』と言われることが一番。きついことがあっても、その一言に救われる」と仕事の原動力を語る。高校卒業後に熊本県立農業大学校へ進学した渡辺さん。とは言え、「農業をする気は更々なく、とにかく働きたくなかったので進学した。卒業後はいろんなバイトをしつつ、遊びに夢中だった」と、まさかのカミングアウト。では、いつから心境の変化が芽生えたのだろうか?

家業を途絶えさせるか、継ぐか。

 当時は遊びたい盛りだったという渡辺さん。だが、ある現実がふと頭をよぎった。「家業を途絶えさせるか、継ぐか。」高齢となった父親、そして息子は自分だけ。「親父が一代で農業をはじめた。一から始めるって余程の覚悟がないとできない。たぶん相当なドラマがあったはずだ。それを俺が途絶えさせていいものか。」悩んだあげく、覚悟を決めた。いざ継いでみると、農業の難しさを思い知らされた。「農大のときの勉強と、実際の現場とのギャップに困惑し、親父ともかなり衝突した。でも親父は俺の先生であり師匠。経験を重ねている親父にはどうしてもかなわなかった」、と当時を振り返る。「自分で経験しないと、なかなかね」と笑顔。父親の背中はまだまだ大きいようだ。

大無田光幸さん/球磨郡球磨村
剪定、摘花、薬剤噴霧、マルチシート敷きなどをはじめ、様々な細かい工程があり、そのどれもがデリケートな作業。
大無田光幸さん/球磨郡球磨村
取材後にオフレコで奥様のことを聞いた際、「いつも本当に感謝してるし、なんだかんだで愛してる」とのこと。ごちそうさまです♪

あとは運まかせ、なるようにしかならない。

 「作業は困難の連続だ」と渡辺さんは語る。みかんの樹は隔年結果といって、果実がたくさんなる年と少ししかならない年とが交互に現れる特性があり、最初に量を採ってしまうと、翌年は採れなくなってしまうため、あえて量を制限するのだという。天候については、「近年は温暖化で厳しい。柑橘系は温かければ良いというイメージがあるが、そうではない。また、水の調整はすごく大変で神経を使う」と話す。頭を使い、心を込めた、きめ細やかな作業が常に要求されると同時に、「あとは運まかせ、なるようにしかならない」。この渡辺さんの開き直った性格が、家業が円滑に回っている要因なのかもしれない。

できることを真摯にやっていけば、どうにかなる。

 最後にビジョンを聞いてみた。「正直、先はわからないが、今できることを真摯にやっていけば、どうにかなるのかなあと。あと、後継者や就農者を増やすために、農業の魅力を発信していきたい。もし今、人生に疲れている人がいたら、まずは農業を週末だけでもやってみては、と勧めたい。自然と戯れるって精神的に良いし、そういう体験プログラムもあると思うので、とりあえず一回やってみてほしい。収入面でも絶対に農業をやった方がいいし、家族で過ごす時間がとれるのも魅力。農業って、やればやるしこ、完全歩合の出来高。だから、やりがい溢れる仕事だと思う。」

大無田光幸さん/球磨郡球磨村