熊本の農業

農業は奥深くて学ぶことばかり、毎年、一年生という気持ちでやっている。
宮川 知之さん 洋子さん/宇城市三角町

2017.06.26

農業は奥深くて学ぶことばかり、
毎年、一年生という気持ちでやっている。

いちじく
熊本県内一の産地である宇城市三角町を中心に栽培。
7月下旬に最盛期を迎え、主に九州・中国地方へ出荷されている。

熊本県の中部、宇土半島の中間辺りに位置する、宇城市三角町郡浦。この地で農業を営んでいるのは宮川知之さん34歳。両親と奥様、それに4人の子どもの8人家族。手掛ける作物は「イチジク」。今年で17年目だという。この一帯は県内有数のイチジクの産地として知られ、その温暖な気候が栽培条件にマッチしているのだとか。ここでは全国的にも珍しいイチジクの加温栽培がおこなわれ、県全体の約9割という生産量を誇っている。「うちのは甘くて美味しいですよ」と宮川さん。「自分で作ったものが上手くできれば嬉しいし、それを食べて美味しいと言ってくださる方がいて、また他の誰かにそれを勧めてくれる。自分の知らないところでそういう連鎖が起こっていると実感できるのが、この仕事の魅力。だからこそいいものを作り続けたい」と思いを語る。

ずっと両親の姿を見てきたので腹は決まっていた

宮川さんは今年で就農6年目。高校卒業後に地元を離れ名古屋で就職した。「家業を継ぐつもりでいたが、台風被害の影響で畑がダメになり県外就職を選んだ」と当時を振り返る。その後、父親の病気をきっかけに帰郷し家業を継ぐことに。「ずっと両親の姿を見てきたので腹は決まっていた」と戻ってくることに抵抗はなかった。とは言え、農業の難しさに日々直面している。「普通の仕事での6年は、ある程度のキャリアかもしれないが、農業は奥深くて学ぶことばかり、毎年、一年生という気持ちでやっている。昨年の経験は実績として役に立つが、同じやり方が通用するとは限らない。自然相手で日々状況は変化する。」実際に、雨の日が続くと日の当たりが少ないため着色がなかったり、水の吸い過ぎで割れたり、青色で熟れてしまうなどの影響が出てしまう。さらに、スリップスという害虫やショウジョバエの発生など、まったく気が抜けない現実がのしかかる。

どんなことを言ったとしても結局のところ家族、『愛情』という前提がある

いろいろと困難な面は多いが、就農してよかったという気持ちに一切揺るぎはないという。「この仕事は自分で時間をスケジューリングできるし、人間関係で悩むことがない。家族なので、気兼ねなく言い合えてストレスは溜まらない。たとえどんなことを言ったとしても結局のところ家族、『愛情』という前提がある。その分、自己管理が大切になるが、自分には今の方が合っている」とその魅力を語る。

今まで受け継いできた家業だから何としても守っていきたい

最後にビジョンを聞いてみた。「イチジク農家は2人では厳しい。先々両親が引退した場合を考えたら、息子に継いでもらいたい気持ちはあるが、強制はしたくない。でも、今まで受け継いできた家業だから何としても守っていきたいし、せっかくの土地や設備を遊ばせるわけにもいかない。以前、県外で就職したとき、家業があることのありがたさを痛感した。だから、とにかく今は継続することが目標だし、それが精いっぱいの状況。これからの農業は助け合いなしには難しくなる。情報交換や勉強会など、周りの皆と連携しながらこれからも取り組んでいきたい」。

甘い香りに包まれたハウスの中で、収穫の時を待つイチジクの実を見つめる宮川さん。笑顔で温かくもてなしてくれた母の洋子さん